戦争に勝者はいない(開高健)
2022.04.01
開高健は、寿屋(現在のサントリー)宣伝部の名コピーライターとして活躍し、1958年芥川賞受賞後に作家業に専念することとなる。1964年 ベトナム戦争の際に朝日新聞社特派員として、南ベトナム軍の従軍記者として戦地に赴き、部隊200名中生還者17名という修羅場をくぐることとなる。氏は、その体験を通した自責の念から、従軍記者に対しても「ホースを持たない消防士」と手厳しかった。
「戦争に勝者はいない」。この一言からは、深い知見が響いてくる。きっと誰もがうなずくだろう。だが、うなずきながらも、争いがやまない現実が照らし出されてくる。
世界はどこへ向かうのか。核の応酬による世界最終戦争も、いまや絵空事ではなくなった。平和運動、核廃絶、安全保障の枠組みなど、すべてが無力化した感が強い。さらには、新型コロナウイルスのパンデミック、地球環境の激変など、地球規模の危機が幾重にも重なっている。少子化の進展も含め、人類という種の絶滅に向かっているとの指摘も聞こえてくる。必然の自滅であろうか。
「人間を幸せにする、その理性が、実は人間を留守にさせる煩悩そのものと同質でなかったか」。(池田勇諦師・2005年11月26日京都高倉会館 親鸞聖人讃仰講演会・『ともしび』2006年4月号)
混迷の因は、機の深信の欠落にあると仏はよびかける。南無阿弥陀仏