「不足までいわせてもらって何不足」(林暁宇)
2025.04.01

4月29日は、林暁宇先生のご命日(釋暁宇・2007年4月29日満84歳西帰)です。
林先生とご縁が深かった北海道某寺に伺った折、額装された一言に出遇いました。
「不足までいわせてもらって何不足(なにふそく)」
清沢満之先生の『絶対他力の大道』第4節「請うなかれ、求むるなかれ、爾(なんじ)、何の不足かある」から感得された一言でしょう。韻(いん)を踏んでいて、ユーモラスで軽やかでもあり、俳句に親しんでいた林先生ならではです。
『絶対他力の大道』は、日記『臘扇記』をもとに、門弟多田鼎(ただ かなえ)先生が成文した教言ですが、第4節には「爾(なんじ=汝・あなた)」とのよびかけが計8回書かれています。
あくまでも「日記」ですから、他人に見せる趣旨で書いたものではありません。ですから、この「爾」は、清沢先生の読者に対するよびかけの「爾」ではなく、苦境にあって砂をかむような日暮らしの中、先生自身が如来からよばれた「爾」です。「俺が」「私が」と生きる他にない者が初めて「爾」とよばれたのです。立脚地が転じ、苦悩の因を言いあてられたのです。
この一言も、林先生に聞こえた如来の大命でしょう。
不足を言い愚痴とため息を漏らすご自身なればこそ、「あなたはいったいどうなりたいのですか」「爾の苦悩を奈何せん」と丸ごと問い返されたのでしょう。 それは同時に「爾は難治(なんじ)なり」との大医王如来の宣告でもありましょう。
林先生には「不足は不信なり」との一言もあります。不足が、生活問題が、そのまま真理問題に転ぜられたのです。すべてが林先生に聞こえた如来の声と仰ぎます。私もまた不平と不満でいっぱいの時、この一言が聞こえてくるかもしれません。
今年は林暁宇先生の19回忌を迎えます。
5月25日(日)14時~17時に拙寺にて「暁宇忌」を勤めます。南無阿弥陀仏