不驕者又不久 おごらざる者も又久しからず (太田道灌)
2020.05.15

『平家物語』は「おごれる人も久しからず」と語る。「自分の地位や権力を笠に着て、威張り散らす人は長続きせずに没落するものだ」という悪への戒めである。誰もがうなずく処世訓であり、道徳である。
江戸城を築城した太田道灌(どうかん)の少年期の逸話が伝わっている。
道灌の父親が「驕者不久」と書き、道灌に向かって「道灌よ。驕れる者は久しからず」と戒めた。すると道灌は「不」と「又」の二文字を書き加え、「不驕者又不久」「おごらざる者も又久しからず」と返したという。
両者の違いが人倫道徳と仏法の絶対的差異である。仏法は「一切善悪凡夫人」(『正信偈』)、善人も悪人も選ばない地平に流れている。