愛国者は愛する国を滅ぼす(暁烏敏)
2025.03.01
昭和23年GHQ統制下、日本の民主化が進む中での暁烏先生の一言である。実に的確に人間の深い迷いを射抜いている。「愛が地球を救う」というが、一面においては「愛が地球を壊す」のである。
大谷派内では宗派が運営する大谷専修学院(京都)を舞台に「労使紛争」が大炎上、25年度は休校になった。あくまでも「労使紛争」だから、職員側は京都地裁に「異動辞令の無効性」を訴えて仮処分を申し立て、並行してユニオンと宗派との団体交渉も継続中である。
報道によれば、雇用主である宗派は職員側と雇用契約書さえ締結していない杜撰さだから、職員の申し立てにも一理ある。仮に「転居を伴う異動辞令アリ」と明記した雇用契約書があれば、争いは回避できたのだから悔やまれる。
新聞報道により広く知られた労使紛争であるだけに、3月7日に京都地裁が発令するのか、却下するのか、注目が集まっている。
「労使紛争」の背景には、現学院長提案の新たなカリキュラムに対する一部の職員と一部の同窓生からの反発があるようだ。
だが今年度の学院は予定通りに運営され、学院生の学習態度、履修状況も上々と聞く。学校としての運営には支障が生じていないのだから、在学中の学院生が、最大の被害者と思う。悲しいかな、守旧派の母校愛が母校を滅ぼす構図である。
いずれにせよ、宗派も、一部の職員も、一部の同窓生も度が過ぎている。理事長や校長の暴走が学校をダメにする事例はあるが、一部の職員が学校を事実上支配している現状は、組織統治(ガバナンス)の観点からも私には理解しがたい。
さて、寸言集の一つ前には「国家が強力になることは戦争の元である。世界中の国家を貧弱なものにしておくことが世界が平和になることではなかろうか」とある。
現在の世界情勢の混乱を見るにつけ、当時72歳の暁烏師の視野の広さと切れ味のよさが痛快に響く。鈍い私は斬られたことにも気付かないほどに、切れ味がいい。南無阿弥陀仏
※『暁烏敏全集』19巻392頁 (『同帰』昭和23年6月号)