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コラム・法語
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「宿業は如来だ」 磯貝暁開師

2020.07.27

臘扇記
清澤満之師の日記『臘扇記』(ろうせんき=明治31年夏~翌春・影印複写本) 明治31年11月18日付。「皆是他力也」で結ばれているが、師にとっての「他力」が25通りに表現されている。『臘扇記』は2冊に分かれるが、1号の末尾が11月18日、2号は翌19日から始まる。結核の病身を生きる人の生活記録だから、日付の左脇に「払暁鈍桃三喀」(ふっきょう=夜明け前に鈍いピンク色の喀血三回の意)と記されている。 喀血が師をして真実を求めさせたのだった。南無阿弥陀仏。

■親鸞聖人は宿業(しゅくごう)の上に何を仰がれたか。「命の言は業なり、招引なり、使なり、教なり、道なり、信なり、計なり、召なり」(『聖』177頁)と仰る。私はこの語をいただくとき、清澤先生が日記の中で「業報、法爾、必然、阿弥陀仏、本願力」等々を「皆是他力也、無限也、大悲也」(『臘扇記』明治31年11月18日付記述・岩波版『全集』8巻387頁)と記されたお気持ちがしのばれます。宿業そのものが実は如来の功徳、働きなのです。帰命、頭を下げて拝むことにおいて、宿業は如来だ。宿業から離れられないというのは、如来から離れられないということなのです。摂取不捨です。お前は私の懐の中でもがいておるのだぞ、宿業、煩悩そのものの実相をよく見よ、お前が一番嫌っている、その捨て場所に困り抜いておる、それが南無阿弥陀仏ではないか。

磯貝暁開『生きるよろこび』257頁



20年7月26日(日)14時~16時。定例法座「清澤満之師に学ぶ」。首都圏は第二波の最中にあり、公共交通機関(電車・バス等)での移動が主流であることも手伝って、自主的に外出を控えるようになってきています。新聞にも「感染増 対応悩む企業」「出社や会食制限も」との見出しがみられます。

今回は「清澤満之師に学んだ人に学ぶ」と題して、愛知県碧南に生まれ暁烏敏師に出遇って仏道を歩まれた磯貝暁開(いそがい ぎょうかい)先生の言葉をレジュメに転載し、耳を傾けました。

200726定例法座
2020年7月26日(日)14時~16時「清澤満之師に学ぶ」。本堂参詣5名。ZOOM参詣16名。ちょうど15時。休憩が終わって後半が始まります!



■清澤先生終生の問題は、いかにして満足心を成就するかということであった。満足に対する一般の考えは、欲望が主になっている。欲望が叶えられるか否かで満足、不満足を定義するということは既に常識になっており、快、不快の感情が裏打ちされています。辞書には「望みが満ち足りて、不平不満がない」などとなっている。欲望、欲求は自己矛盾で、欲望によって欲望を満たすことは永久にできない。・・もともと満足と欲望を一つにする考え自体が間違っている。満ち足りて眠るのでなく、安心して働ける場としての、行動の始源となるような満足心は、欲望とは何の関わりもない、真理の認識によって直下に成就する事柄で、白日の下にさえ立てば求めずして影は足下に来ている。  

(同上275-276頁)



■ 如来・浄土・光明の実在を何で証明するか、私の煩悩がする。照らされたものを示す以外にない。法の実在を証明するには、その法に照らし出されたものを、「これを見よ」、という以外にありません。「こころは蛇蝎(じゃかつ=ヘビ・サソリ)のごとくなり」(『愚禿悲歎述懐』『聖』508頁)という、聖人にとってそれがそのまま如来の実在を証明する語です。・・「悪性さらにやみがた」い根性が見られてしまえば、「(我等は絶対的に)他力の掌中にあるものなり」(『絶対他力の大道』第二節)で、そこに自由の世界が出現します。聖人にとっては、救われない、それが救いだったのです。そこには何らの論理をさしはさむ余地はありません。私たちが救われてゆくとはどういうことか。南無阿弥陀仏からも見放されている。それが南無阿弥陀仏の救いなのです。キルケゴールは「信仰はパラドックスだ」と申しますが、たしかに逆説であります。

(同上234-235頁)



■ 信心を明らかにしたと思っていることが、えてして自分の都合で作ったものかもしれない。そして説教師に尋ねる。その人はまた自分の都合のいいような返答をする。「これが本当の信心だ」「あれは本当でない」と互いに争っておりますが、その真偽の基準はどこにあるでしょうか。聞く人は聞く人で一つの物差しを持ち、語る人は語る人で物差しを作って、「それでお前は善い」「悪い」と判断して、安楽になるべきはずの信心によって争いの種をまいております。これは主観の心、自分の思いですることです。「自力の信心」と申します。

(同上236-237頁)

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